【詩】「ジクムント・フロイト」

「ジクムント・フロイト」


科学、とはなんの関係もない

人間における性生活とは、イデオロギーにすぎない、

夢は独立し、暴走する

迷宮への甘いあこがれ。実際アメリカで私は、

行方不明になった。弟子たちとりわけユングが

大騒ぎして探してくれた。

そんな推理小説。嗤ってくれたまえ

チェコ人の、羊毛商人の息子を。

しかるに私がうち立てた魂の大伽藍

二十世紀に光輝く人間の功績。だが、私は

激しく孤独だった。その激しさが、

精緻な分析に向かわせた。私が死んだら、いったい誰が、

宇宙を定義できるのか。

おやすみなさい、Have a good dream!



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【詩】「アンリ・ベルクソン」

「アンリ・ベルクソン」


時間の中で、言葉と空間の間に吊られ

意識を取り出そうと夢見る。同時期フロイトと、

同じものを見つめ、

魂のありかを探る。

結局、肉体と魂は平行していないことを

発見し、みずからのなきがらを葬る。

そらこれが魂というものだ、それは、

焼き場では拾えない、死んだ時

ひとは魂を解放する、肉体から

それから時間だ。ブラックホールが

どこよりも明るいなんて

知っていたさ、彼は笑って

アインシュタインを

送り出す、空間へと。




【詩】「詩人」

「詩人」

私が「おとうちゃんへ」と書けば、みなは嘲笑って退く。
Lowellが"To Daddy"と書けば、みなは、きっと何かあると思う。
彼はアメリカの有名詩人だから(まあ、それさえ知らない日本の詩人は多々いるが(笑))。
有名人はいろいろなコースを通って「有名」となる。
多くの場合、権威と結びついて、読み手になにかを保証する。
無知な読み手は、それで安心するわけだ。
自分は高尚なものを読んでいると。そういう保証がないと、
とても不安な人々がいる。程度の低い、有象無象のヤカラには
金を払いたくない。しかし、実際、計る能力はない。
それで、有名であるかどうかを一種のはかりにするわけだ。
見よ! Lowellのdaddyは、尊敬され、
私のおとうちゃんは、歯牙にもかけられない。
いまだに、古い、詩のようなものを書いて悦に入っている、
あの「詩人」。嗤うのはこちらだ。
日本の狭い詩の世界では、それを権威だと
信じ込んでいる人々がいる。
クサいリフレインなんかしちゃってサ(笑)。



【訳詩】「To Daddy」Robert Lowell ("History" 1973)

「To Daddy」Robert Lowell ("History" 1973)」

I think, though I didn't believe it, you were my airhole, resigned perhaps from the Navy to be an airhole____
that Mother not warn me to put my socks on before my shoes.

******

「とうさんへ」ロバート・ローウェル

あなたは、そうは思ってはいなかったが、ぼくの水ぶくれだ、たぶん水ぶくれになるために海軍を辞めた──
母さんは靴を履く前に靴下を履けとは言わない。



【詩】「おとうちゃんへ」

「おとうちゃんへ」

じてんしゃでかえってきていんさつのいんくのにおいのするほうそうしにつつまれたものをぶどうだよといったけどほんとうはみるくのみにんぎょうだったすでにくらいゆうがたのにわほどわくわくしたことはなかった。なるほどぶどうとにんぎょうはおなじやわらかさだった。そんなうそをどうやっておもいついたのか。






山下晴代の「そして世界は泥である」

山下晴代

Author:山下晴代
小説『新リボンの騎士』(「すばる」集英社)ほか。
第一詩集『今はもう誰も杉村春子など知らない』(中原中也賞候補)
第六詩集『冬が来る』。すべての詩集は、製直.comで買えます。ご案内はHPに↓

http://www.mars.dti.ne.jp/~rukibo/

第7詩集『ねじの回転』発売中
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=103866719

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